葬儀社の抱える課題は、企業規模や成長フェーズによって千差万別です。本記事では「脱・属人化」「柔軟性&内製化」「経営&営業力強化」という3つの視点で、葬儀システムの導入事例を整理しています。
各社がどのような課題に対し、どういったシステムを選定して経営を変革させたのか、自社の状況に近いケースを見つけて、システム選びの参考にしてください。
多くの葬儀社では、特定の担当者しかメンテナンスできない、いわゆる「オレオレ管理」のExcelマクロや、老朽化したオフコン(AS/400など)、クライアントサーバー型システムが長年使われてきました。これらは業務に特化している反面、災害時の停止リスクやハードウェアの保守終了、担当者の退職によって事業継続が脅かされる危険性をはらんでいます。
属人化した環境からクラウドや標準パッケージへ移行し、「誰がいなくなっても回る仕組み」「災害に強い基盤」を手に入れた3社の事例をまとめました。

同社では長年、元システムエンジニアの社員が独自に開発したExcelマクロによる発注システムを利用してきました。作成者以外はシステムの内部構造を把握しておらず、修正やメンテナンスが不可能な状態でした。WindowsやExcelのアップデートに伴って使用できない機能が徐々に増えていき、商品マスタの更新さえままならない状況に陥ります。
開発者が退職することになり、ブラックボックス化したままシステムが放置されるリスクが顕在化しました。システムが停止すれば葬儀運営にも大きな支障が出かねない状況です。
新たなシステム選定にあたり、複雑な発注業務に対応できる機能性と、取引先ごとに異なる発注書フォーマットへの柔軟なカスタマイズ力が求められました。同時に、社員の平均年齢が高いため、直感的に操作できるわかりやすいユーザーインターフェースであることが必須条件でした。
採用された「ブリッジ葬儀」は葬儀社が開発に関わったクラウド型システムで、現場の業務に沿った画面構成と、Salesforce基盤によるカスタマイズ性をあわせ持ちます。現場への定着を最優先し、ベンダーによる丁寧な研修が行われた結果、システムに不慣れなスタッフも徐々に抵抗なく利用できるようになりました。
導入後は、異なる複数の情報の検索が単一の検索窓から瞬時に行えるようになり、複数の画面を行き来する手間が解消されました。ダッシュボード機能により、葬儀件数などの数値がリアルタイムで可視化され、これまで手作業で行っていた集計業務が不要になっています。
検索性と集計性の向上は、現場スタッフの意識改革にもつながりました。全員が数字を意識して業務にあたるようになっています。

神奈川県で葬儀式典事業を展開する同社は、基幹システムとしてAS/400をオンプレミス環境で運用していました。台風直撃による停電でシステムが停止し、復旧に多大な時間を要した経験があります。
運用は総務や設備管理を兼務する担当者1名に依存しており、テープ交換や機器のエラー対応もこの1名の担当者が抱え込んでいる状態。ハードウェアの保守期限が迫る中、担当者不在時にトラブルが発生すれば、葬儀の受付から請求業務までが影響を受けかねないという構造的なリスクを抱えていました。
システムの刷新にあたり、オンプレミス環境での継続とクラウドへの移行を検討。提案された「merisis Powerクラウド」は、オンプレミスとの単純リプレイスと比較して投資を抑えられる点が魅力でした。現行の運用フローを大きく変えずに移行できるのも評価されたポイントです。
そして、大きな負担が集中する「一人情シス」体制を解消し、運用保守を専門ベンダーに任せることで、本業にリソースを集中できるという判断が導入の決め手となりました。
移行後は、AS/400の運用・監視・バックアップ作業がすべてベンダー側に一任され、社内担当者の負担が劇的に軽減。テープ交換や機器監視、停電時の対応といった業務から解放され、本来の総務業務に専念できる環境が整いました。
月々のランニングコストも低減され、災害によるシステム停止リスクへの備えも強化されています。システム基盤が安定したことで、本来のコア業務に集中できる体制となりました。
西宮・宝塚・大阪エリアで4つの葬祭会館を運営する阪急メディアックスでは、以前はクライアントサーバー型のシステムを使用していました。
課題となっていたのは、会員情報と葬儀情報が別管理になっていた点です。事前相談から施行、アフターフォローまでの一連の流れを一元的に把握できず、顧客情報の転記作業が頻繁に発生。同じ情報を複数回入力する手間は工数を圧迫するだけでなく、入力ミスの原因となり、業務品質の向上を阻む要因となっていました。
グループ会社のホテル事業ですでに導入実績があり、信頼性が担保されていたことが後押しとなり、選定されたのが「FN Cloud」です。葬儀業務に必要な標準機能を網羅しつつ、独自の業務フローに合わせたカスタマイズが可能でした。
特に評価されたのは、ベンダーが業務内容を深く理解し、現場に即した仕様を作り上げる姿勢。システム刷新は単なる入れ替えではなく、業務フローそのものを見直す好機となりました。
導入により顧客情報、葬儀内容、売上データがシームレスに連携され、確認作業や再入力の手間が大幅に削減。工数の減少は入力ミスの減少にもつながり、顧客対応の正確性が向上しています。
営業スタッフは過去の履歴や見積データを即座に参照できるようになり、商談のスピードと質が高まりました。電子印鑑や経理システムとの連携も含めた業務のデジタル化が進み、請求・入金管理の効率化も実現しています。二重管理の解消と業務標準化が進み、基幹業務の土台となるシステムが整備されました。
葬儀の形態やニーズは刻々と変化しており、システム導入時には想定していなかった機能が後から必要になるケースは珍しくありません。パッケージシステムの原理的な難点に不満を抱き続けるのではなく、自社の業務フローやビジネスの拡張に合わせて機能を追加・変更できる「柔軟性」を重視する企業も増えています。
標準機能を活用しながら、アプリ追加や項目設定を自社主導で行い、システムを「育てている」企業の事例をまとめました。

4つの自社式場を運営するセレモニーきうちでは、外部ベンダーに開発を依頼した基幹システムを約10年にわたり利用。システムは葬儀業務に合わせて作り込まれていたものの、サポート終了の時期が近づき、改修や保守の負担が次第に重くなっていました。
次期システムを検討するにあたって、同等レベルの機能を持つパッケージを探しましたが、旧システム並みにきめ細かな業務をカバーできる製品はなかなか見つかりません。自社で項目追加ができるカスタマイズ性の高いシステムも候補に挙がったものの、複雑な処理を再現するのは難しそうで、決め手に欠けていました。
システム選定にあたってセレモニーきうちが重視したのは、運用フェーズでかかり続けるランニングコストでした。社内でプログラムを組める技術者は1人のみで、保守や仕様変更のたびに外部ベンダーへ費用を払い続ける構造から抜け出しにくいという懸念があったためです。
そうした中で、以前から付き合いのあった葬儀社・メモリアが自社開発した「ブリッジ葬儀」を紹介されます。葬儀社が自ら開発に関わっているため業務理解が深いこと、Salesforceを基盤にしているためノーコードでのカスタマイズと複雑な処理の両立が見込めることから、「旧システムの作り込みを引き継ぎつつ、将来に向けて育てていける基幹システム」だと判断しました。
導入プロジェクトでは、「現場が安心して使い始められること」が最優先に据えられました。開発元のメモリアは何度も同社を訪問し、全社向けの説明会に加えて、施行部門・営業部門など部門別のレクチャーも丁寧に実施。葬儀業務を理解しているベンダーが、現場の言葉で説明してくれたことで、従業員の不安が和らぎ、スムーズな立ち上がりにつながりました。
操作感は旧システムから大きく変わったため、当初は戸惑いもあったものの、一定期間の利用を経て、違和感なく日常業務で使えるまでになっています。
仕様変更の面でも、以前はシステム会社にプログラム改修を依頼していたような内容の一部を、Salesforce標準機能やノーコード設定によって社内で対応できるようになりました。

栃木県北部で7会館を運営し、事前相談から施行後のアフターフォローまでを一貫して提供しているなすの斎場グループの事例です。
創業時から利用していた葬祭専用システムでは、過去の葬儀内容を即座に検索することが難しく、電話着信と顧客情報を紐づけるCTI連携も実現できませんでした。
スプレッドシートをはじめとする別ツールで情報を管理する「つぎはぎ運用」が常態化し、情報は散乱。30年前の履歴を参照したいというニーズもある中で、紙や口頭伝承に頼る管理手法は限界を迎えていました。
新システムには、サーバー管理が不要なクラウド型であることと、自社の業務に合わせて機能を追加できる柔軟性が求められました。Salesforceなども検討されましたが、営業管理主体の設計思想が合わないと判断され、最終的に採用されたのは「kintone」です。
専門知識がなくともアプリを作成できるノーコードツールであり、現場スタッフにも馴染みやすい画面デザインが特徴です。受注前後の顧客関係管理(CRM)を自社で構築・改善していけると判断し、導入を決定しました。
稼働までのわずか3か月間(2018年12月~2019年2月)で約9,000件の顧客情報を移行し、全社員が利用する共通基盤を構築しました。顧客管理、事前相談、供物注文、見積・請求など複数のアプリを運用し、アフターフォローの売上は前年度比200%以上の成長を記録しています。
着信と同時に顧客情報が表示されるCTI連携により、電話対応の品質とスピードが向上。日程表や帳票の出力も自動化され、入力ミスや確認作業の手間が減るなど、バックオフィス業務の負荷も軽くなりました。
シニア向けの葬祭・生活支援サービスを提供するラポールは、M&Aを通じて会館網を拡大し、「ゲートハウス」ブランドの葬祭会館や訪問看護事業、終活相談窓口「あしたの窓口」などのサービスを展開しています。
しかし、従来の葬祭基幹システムは会計ソフトと連携しておらず、多店舗展開や将来のIPOを見据えたスピード経営の足かせとなっていました。事業拡大に合わせて全社共通の基幹システムを整備することが急務となっていたのです。
現在の業務を効率化するだけでなく、将来的な拡大やサービスの多角化を見据え、変化に強い基幹システムへの投資が必要であると判断されました。
システム刷新にあたり、標準機能の充実度、多店舗・多ブランドでの運用実績、カスタマイズ対応力を軸に検討を実施。「FN Cloud」が選定されたのは、葬儀業務に必要な機能を網羅しているだけでなく、新ブランド開設に伴う会館追加や、料金プラン・サービスメニューの変更に対して柔軟に対応できる点が評価されたためです。
会館やブランドごとに異なっていた管理指標が導入後には統一され、施行件数、売上、粗利などを同じ基準で比較・分析できるようになりました。標準機能に自社独自のカスタマイズを加えることで、現場のオペレーション効率化と経営管理のしやすさを両立させています。
新サービスやキャンペーンの成果をシステム上のデータから定量的に検証でき、PDCAサイクルを回すための土台が整って、データに基づく改善に取り組めるようになりました。柔軟に拡張できるシステム基盤は、ラポールの成長戦略を支える重要なインフラとなっています。
システム導入の目的は業務効率化だけではありません。蓄積された顧客データや施行データを分析し、次の売上を作るための武器として活用する「攻めの姿勢」としてのDXも重要です。
葬儀データを起点にアフターサービスや供養ビジネス全体でのクロスセルを実現し、新たな収益機会を創出している企業の事例を紹介します。
老舗企業・泉屋では、長年の事業運営により膨大な顧客・会員情報を保有していましたが、事業ごとにシステムが分断されていたため、営業活動に有効活用できていませんでした。ランクによって異なる会員価格や特典設定の複雑さゆえに、販促キャンペーンの効果測定も困難な状態。
データ分析を行うには各システムからデータをエクスポートし、Excelで加工・集計する必要があり、現場がスピーディーに数値を確認して適切な施策を打つことができていませんでした。
導入された「FN Pro」は、葬儀の施行情報だけでなく、会員属性、契約内容、過去の利用履歴など、経営判断に必要な情報を一元管理する機能を備えています。システム上に蓄積されたデータを、会館別、ブランド別、商品別といった多様な切り口で分析できる仕組みを構築できる点が評価されました。
単なる事務処理ツールではなく、多店舗展開や新サービス開発を支えるための「データ基盤」として機能することが導入の大きな目的でした。
システム導入後は、会館ごとの施行件数、単価、粗利といった実績データが可視化され、各拠点の強みや課題が明確に。会員属性や利用履歴の分析を通じて、どの年代やエリアでどのようなサービスが支持されているかを把握し、新規出店計画やプラン設計の判断材料として活用されています。
データを起点とした商品改定や販促企画が可能になり、従来の「勘と経験」に頼った経営から、客観的なデータに基づく戦略的な経営へと進化を遂げた事例です。
埼玉県でギフト業と葬儀業を営むプラザオオノは、一人の顧客と長期にわたって関係性を築くビジネスモデルを展開しています。しかし、顧客情報は紙の台帳で管理されており、顧客数が増えるにつれて履歴の照会に多大な労力を要していました。
また、ギフト側はシステム化されていた一方で葬儀側は紙ベースのままだったため、ギフトの顧客が葬儀を依頼したり、葬儀後に法事の返礼品を注文したりといったクロスセルの機会を一元的に把握できず、販売チャンスを逃しがちなのも課題でした。
顧客マスタに故人名など葬儀固有の項目を追加し、ギフト用と葬儀用で異なる請求書フォーマットを作成するといった、一つのパッケージで全く異なる二つの事業をカバーする仕組みを構築する必要がありました。
当初はギフト業の効率化だけを目的に販売管理システム「SMILE BS 販売」を導入しましたが、その後葬儀業の基幹システムも同じ「SMILE」のプラットフォームへ統合する方針を固めます。フルスクラッチ開発だと多額のコストがかかるところ、「SMILE BS 販売」が持つ項目拡張や自由帳票機能と言った柔軟性を活かせば統合が可能であるとわかったのが決め手です。
顧客情報の一元化により、一周忌や三回忌などの法要タイミングに該当する顧客をデータベースから簡単に抽出できるようになりました。適切なタイミングでDMや案内を送付し、返礼品需要をきめ細かくフォローする体制が整えられています。
過去の購入履歴を即座に参照できるため、「前回はこの品物でした」といった具体的な提案が可能になり、接客品質が向上。請求書作成をはじめとする事務処理が標準化され、営業活動に充てる時間が増加したことで、小規模ながらもデータを武器にした攻めの経営に踏み出しつつあります。
葬儀システムの導入事例は一様ではありません。
例えば、溝口祭典はExcelマクロ依存から脱却し、クラウド化で属人化と更新リスクを解消しました。なすの斎場グループのようにkintoneを用いてCRMを内製化した事例もあれば、泉屋のようにデータ分析基盤を整備して、営業・経営に活かす企業もあります。
外部に頼り切りだった業務を標準化したいのか、現場主体で改善できる柔軟さが必要なのか、データを武器に事業を広げたいのか、事例をヒントにしながら自社の次の一手を描くことが、長期的なDX成功の第一歩になります。
葬儀システムの導入は、単なる業務の置き換えではなく、未来の収益基盤をつくる前向きな投資です。
現場に定着する製品を見つける成功のカギは、ベンダーごとの得意領域と、自社の導入目的が合致しているかを見極めることです。
本サイトでは、「使い慣れた環境のスムーズな移行」「負担を抑えたスモールスタート」「在庫を含めた管理体制の強化」といった、具体的な導入の目的に応じた葬儀システム3選を紹介しています。 各社の特徴や強みから、自社の戦略に合致するシステム選びのヒントとしてご活用ください。
引用元:シンクエイト公式サイト
( https://bridge-funeral.com/ )
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